冷凍でやってくる、すごい鯖寿司に驚いた。

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京都。

言わずと知れた延暦時代に端を発する古来の日本の首都であり平安京から続く日本の中心都市だ。雅称「千年の都」。室町幕府期に日本の唯一政治の中心地であった場所でもある。その後の鎌倉、室町時代から戦国時代を経て安土桃山、江戸幕末期までの間も政治を司る場所のひとつとして存在感を保ち続けてきた。

そんな京都には周辺に海がない。それはつまり歴史的に言えば食習慣として海鮮、生魚など食べる風習が薄く、干物、火通し、酢締めなどの加工された魚料理の文化が発達した場所と言える。京都へ魚介類を運ぶ日本海から通じるルートを「鯖街道」と呼ばれる道があるそうだ。
そういう場所で生まれ、発展してきた「鯖鮨」というもの。

もちろん近代から現代においてはインフラの発展と共に食文化は変化を見せるがその地に根付いた伝統的な食習慣は根強く残っている。

京都とくれば鯖鮨である。バッテラではない。この鯖鮨とバッテラの違い、見分け方がよくわからなかった。調べるとどうやら、

鯖鮨 → 高級、巻き簀で作る棒鮨の一種、ルールは竹の皮を巻いてあるもの、京都

バッテラ → 庶民的、木箱で型を取る押し寿司、ルーツは鯖でななくこのしろ、大阪

という違いがあるようだ。いろいろ興味深い。

調べるうちにバッテラの語源がポルトガル語にあり(日本人がポルトガル語で名付けた)バッテイラという言葉が小舟という意味を持つと言う。これはイタリア語のバルケッタのことでないか。現在ではバルケッタ(小舟)という名前、イタリアの屋根無し、小型、2座のスポーツカーがその名を冠されたりしている。海、船、魚、と面白いリンクを感じる。

閑話休題。鯖鮨の話であった。

今回やってきた鯖鮨、京都宇治の「竹林 本店」のものである。「鯖姿寿司」の商品名で、なんと冷凍でやってくる。まだ調整をしていらっしゃるようで現段階では未販売なのだ。そんな鯖寿司を試すことができた。

なぜ冷凍なのか、冷凍の寿司、アジア、タイの高級スーパーなどでは見たことがあったが京都のしゃんとしたお店が手掛けられたというところにちょっとおどろいた。

あたりまえだが普通の鯖寿司であれば、賞味期限がいいところ購入したその日1日という感じであろう。

ところが鯖寿司、棒鮨であるわけで、1本がそこそこの量だ。ぎゅっと目の詰まったごはんは食べ応えがある。なかなかの量ということで一気に食べられずにやむなく家庭で冷凍にしてしまうこともあるだろう。

そこからヒントを得て消費者が自宅の冷蔵庫で冷凍にすると当然風味が落ちてしまう。ならば冷凍で販売をしてみてはどうか、というところから開発がはじまった。

とてもおもしろい。

お土産で買って帰るお客さんにもう少し幸せになってもらおう、せっかくおいしい鯖寿司なのに冷凍や冷蔵でごはんがかたくなったりするのは忍びない、というところからなのであろう。心意気が嬉しい製品だ。さて、これが素晴らしかったのだ。

解凍方法は2種類。

レンジアップ解凍なら200Wで150~180秒(2切れ)

常温解凍も可能で、冷蔵庫内での保存解凍は推奨されていない。

わたしはレンジアップ解凍、常温解凍どちらも試してみたが、差はないと感じた。常温解凍は今の季節で室温であるから12~3度であったはず。3~40分でレンジアップ解凍と同じ状態になった。さて、試食。

こりゃあすごいのひとことであった。

鯖の身の厚みは目で見てもわかるがそれを口に入れ、噛み切るとより実感として強く感じるのだ。半身丸ごとという感じであろうか。手応えが大きい。ふわりとする食感の鯖の身と酢飯のねっとりした舌触りにうっとりする。

飯の部分だけを口にすると実にいい香りがする。木桶の香りのような青々した香りが鼻を抜ける。これはなんだろう。とにかくこれはなかなか大変なものだ。

鯖の味わいの強さ。舌をぐいぐい押してくるような強い旨み。それに上品に仕上がった酢飯と同じくほっとする薄い昆布の柔らかな甘み。それを舌の上でかきまぜてやる。たまらない体験だ。厚みのある旨味が余韻として口の中に残る。しかし、しつこくはない。

そうそう、昆布であるが、お作法としては剥がしてから食べるのが正統派であると言われている。これは鯖鮨に乗る昆布の厚みと内容にもよるところがある。バッテラ的な薄い白板昆布であれば柔らかいものも多いので現代においては一緒に食べるのもありであろう。厚く色の濃い昆布が巻いてあったら外して食べるのがいいだろう。「竹林 本店」の「鯖姿寿司」は薄いものが乗っていたので一緒に食べることにした。

鯖、圧倒される味わいであった。そしてその味わい、面白いものだなあ、と感じるのだ。

酢締めなわけであるが、はじめに一瞬酸味もくるのだが鯖の熟成された旨味に飲み込まれてそれが薄れていく。旨煮の大波の中で何回も咀嚼してそこからやってくる旨みを受け止めようと格闘する。

あいだあいだでどこからか昆布の旨みと優しさもやってきてほっとさせられたり、またも鯖の旨味に引きずられたり。気がつけばその誘惑に我慢できずにごくりと飲み込む。その後に口の中に香ばしさと甘みが残る。まったく幸せな体験だ。

押し寿司であるわけで、ご飯がみっちりというのはわかる。そこからねっとりがほんの少しだけ浮かび上がる。が、ねばねばと口の中に長居はしない。口中から去っていくのが残念な味わいと食感。自分の口の中の立体感が再構築されるような体験だ。

冷凍であるにもかかわらず、ご飯はしっとりもっちり、鯖の身はふっくらしてうまみつよく、にわかにはこれが凍ったまま宇治からやってきたとは信じがたい。どんな場所にいる人でも冷凍庫に空きがあればこれを保存、食べられると言うのは物凄いことではなかろうか。

とにかく解凍して準備ができたら間をおかずに食べること。ごはんがかぴかぴなどもってのほか。美味いものは美味いうちに食べる、これが原則だ。

そしてこの冷凍鯖鮨、なんと個包装なのである。これがなんとも素晴らしい。

棒鮨であるわけで、1本2本と数えるものであるが、それを食べやすいサイズに輪切りにカットしてそれひとつひとつを個包装にしてあるわけだ。つまり食べたい分量を解凍して残った分はまたあした、ができるということ。これには拍手を送りたい。

先ほども書いたがなにしろごはんがぎゅっと詰まったけっこうな腹持ちとなるひと切れだ。わたしは3切れ食べるとお腹が張ってきた。

その味、旨味の満足感の高さと相まってたくさん食べるという感じにはならないのではないか。そんなときにこの個包装が効いてくるのだ。量を食べられないご高齢の方やご婦人にもにもこれはありがたいはずだ。

価格は4500円。それに冷凍での送料がかかる。

ちょっと特別の日、ご褒美を自分に欲しい日のために冷凍庫に入れておくなどいいのではないか。また、大事な方への気の利いた贈答品という使い方もできる。

それもそうなのだが、一度食べてしまうとちょっと忘れ難い。きっとギフトのついでに自分用も購入してしまうという予感がする。

はぴい

フードジャーナリスト、ビデオブロガー。食をテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」に5000記事の実食カレーレポートを掲載。著書 技術評論社「iP...

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