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錫製のスクリューボールでデキャンタージュ。デイリーワインがアップグレード。

レビュー

そもそも錫という金属はどういうものなのだろうか。

錫は融点が200度ちょっとと低く、柔らかく加工がしやすいという特徴を持つ金属だ。高価なものでもあるが加工がしやすいため古来より道具や工芸品に使われてきておりその歴史は長い。

紀元前1500年代の古代エジプト王朝での出土品、日本なら正倉院に錫製の宝物「錫薬壷」が収められていることが知られている。

その優れた特性として熱伝導率の高さと高いイオン効果による抗菌作用がある。

昔から「錫製の器に入れた水は悪くならない」と言われ酒器、茶器や神仏具などに使われてきた。錆びず、朽ちず、というのは縁起がよいものであるというわけだ。

酒などの雑味を除くこと、まろやかな味わいになることから調理器具や器に使うのにうってつけ。

酒たんぽなどといわれる酒燗器具、正しくは「銚釐 / ちろり」という日本酒に燗をつけるときに使う、つぎ口と取っ手のついた金属の小さなコップのようなあれには錫製のものが珍重されると聞いたことがあったのを思い出した。

そんな錫という金属を使ったデキャンタ、というのが今回紹介するもの。

「浪雲醇酒球 – 輕巧型玻璃醒酒瓶組」

ウェーブクラウドアルコールボールとデキャンタのセット。

台湾、WOO Collectiveの「物」シリーズの中の製品で、台湾で1870年代に盛んであった伝統的な錫加工技術を用いたモダンなデザインの錫製品を展開している。「浪雲醇酒球 – 輕巧型玻璃醒酒瓶組」はドイツのデザインアワード、レッド・ドットの受賞作品でもあるのだ。

面白いと思ったのが錫製のボトルやちろり、器でではなく、デキャンタの口に「浪雲醇酒球 / Liquor Perfection Ball」と呼ばれる錫でできた潜水艦のスクリューのような螺旋状のボールをおいてやり、そこを通して酒を注いでデキャンタージュしよう、というコンセプトであること。

俄然試してみたくなる。

お酒は誰もがよく知っているであろう入手しやすいものを用意した。

本当にカジュアルなかたちでワインを、と外出先で考えるとき、思い出すのがサイゼリヤ。ボトルでの提供もあるあのワインは飲みかけを持ち帰ることができる。

「サイゼリヤ ロッソ マグナム」を試してみた。

デキャンタの口に「浪雲醇酒球 / Liquor Perfection Ball」をおいて上からワインをゆっくりと注ぐ。シャバシャバと広がりながらカラフェの底へ落ちていくのを見ると、なるほど空気が入り香りが開く過程をを目で見ている、という感があって楽しい。

サイゼリヤで食事とともに嗜むのに必要にして十分の内容の赤ワイン。

辛口でちょいとしぶさもあって、引っかかりなしの水のようなワインとは一味違う悪くないものだと思う。デキャンタージュせずに飲むと、アルコールの強さがちょっと味に出ている感がある。

鼻に抜ける強い刺激があってそれが手応えになる。

さて、デキャンタから浪雲醇酒球を通して注いだものはどうか。

口に含むと驚いたことに確実に舌と喉へのあたりが柔らかくなっているのだ。舌と鼻に抜ける刺激が穏やかになり、暴れていた刺激の手綱が引きしぼられた感じ。明らかにとがった感じが抑えられている。驚いた。さあ、面白くなってきた。

お次もこれまた誰もが知っているであろうワイン。「セブンイレブン アンデスキーパー 白」

酸味の爽やかさとクセなく舌の上でさらりと香りが消えてゆく軽い味わいのチリ産の白ワイン。これをデキャンタで浪雲醇酒球に通してから飲んでみると、そのままで飲んだ時に少し感じていたエッヂが消えており舌触りが良い。

口の中がトゲトゲしないのだ。明らかにまろやかになっている。

ちょっと思いついて浪雲醇酒球をカラフェから取り外してグラスにそのまま置いてみた。

これもなかなかいい。

一人の時は気軽に浪雲醇酒球だけをグラスに突っ込んでボトルからワインを注ぐなんてラフなスタイルもありだろう。

さて、ワイン以外はどうなのか。

用意したのはいも焼酎。宮崎、霧島酒造の「茜霧島」。

もともと花のような香りで女性にも好まれる華やか、鮮やかな焼酎だ。

浪雲醇酒球を経た茜霧島、やはり当たりが柔らかい印象に変化するも、きちんと焼酎らしさが残る。

舌への刺激が柔らかくなって、一瞬おやっと思わせてから舌の奥と喉を柔らかく抜ける熱い空気のような霧島の例の感じがちゃんとある。

とても面白い。

実は一番面白かったのが、柑橘系のお安めのソーダ。

デキャンタージュで明らかに甘みが増すのだ。これはどういうことだろう。劇的な変化を感じた。

もう一度、もとのジュースを飲んで「これは同じジュースではない」と思わず呟いてしまった。

もとの方は当初感じなかった苦味さえ感じてしまうのだ。今までそんなこと気がつきもしなかったのに。オレンジジュースも酸味と苦味が穏やかになった。ソフトドリンクでも少なからず効果があるようだ。

全体を通してみると、やはり顕著に味が変わったのはワイン、赤であった。飲み比べればちゃんと変化が感じられる。ちょっと驚きであった。感じ方は人それぞれではあると思うが、わたし以外の人に聞いても変化はあるという答えが帰ってきた。

カラフェの口が滑らかに均一で切り欠きがないためワインを注ぐと少しカラフェへ垂れてきてしまうのが気になったが、何のことはない、本来こういう時はクロスを添えて注ぐもの。気にはならない。単純にお作法の問題だ。

そのものの機能、デキャンタージュでまろやかにという部分ももちろん大事だが、大事な日だったり特別な日にちょっと楽しいディナーのテーブルを作った時など、この「浪雲醇酒球 – 輕巧型玻璃醒酒瓶組」のセットを使うといい。デキャンタージュをすると、目にも楽しいパフォーマンスで気持ちが盛り上がる。

友人や両親、お世話になった人の特別な日のパーティーに手軽なテーブルワインと一緒にプレゼントで持って行ったらきっと喜んででもらえるのではないか。

デイリーで飲んでいる気軽なワインが目の前でワンランク上にアップグレードされることにみんなが驚くに違いない。


本商品は、現在 STAMP WORKS STORE での取り扱いはございません。

はぴい

フードジャーナリスト、ビデオブロガー。食をテーマとしたライフスタイルブログ「カレーですよ。」に5000記事の実食カレーレポートを掲載。著書 技術評論社「iP...

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